フォーカシング・ネットワークは、フォーカシングを広くご紹介するために活動しているグループです。ニューヨークにある国際フォーカシング研究所の認定資格を持つフォーカシング・トレーナーが運営しています。国際フォーカシング研究所(The International Focusing Institute,略称TIFI)はフォーカシングの提唱者ユージン・T・ジェンドリンが1985年に設立した国際的な,異なる文化にまたがる組織です。フォーカシングとその土台である「暗黙の哲学」(Philosophy of Implicit)を普及する世界中の人々や団体を支援することを,その使命としています。
ごく簡単に言うとすればフォーカシングは、自分自身のこころの声、からだからのメッセージに耳を傾ける方法です。私たちは、まだ言葉にはなっておらず漠然としているけれども、いろいろな気持ちや感覚を感じながら生きています。そんな漠然とした気持ちや感覚に注意を向け,丁寧に穏やかに感じ、それを言葉などで表現していくことで、自分の気持ちや必要としていることがはっきりとつかめたり、その感覚の自分にとっての意味がわかったり、自分が言いたかったことを納得のいく表現にできたりします。またその中で、今いる状況への向きあい方について新しい視点が得られたり、体験が一歩先へと進んでいくということも生じてきます。
フォーカシング(Focusing)はセラピーが機能する(クライアントが変容する)時、実際に起こっていることはどのようなことか、という研究から発見されたプロセスで、心理療法の実践に役立てられています(フォーカシング指向心理療法と呼ばれています)。体験的(experiential)とは何かを示すこのフォーカシング・プロセスや、人が自分の体験に触れているときに感じられる意味感覚を指すフェルトセンス(felt sense)は、エモーション・フォーカスト・セラピー、ハコミ、SE™療法(ソマティック・エクスペリエンシング)、AEDP™心理療法(加速化体験力動療法)、センサリーモーターサイコセラピー、トラウマ・レジリエンシー・モデル(TRM)とコレモ(CRM)など、数々の体験的療法や身体志向療法、トラウマ・ケアに影響を与え、取り入れられたり参照されたりしています。
またこのプロセスは、人の創造性・創造的活動(Creativity)でも起きており、それを支え進めています。
フェルトセンスとは
フォルトセンスは、フォーカシングにおいて重要な用語です。
フォーカシング・ネットワーク主催のフォーカシングを学んでいくコースで使用しているテキストには、次のように書かれています。
ジェンドリンは、暗に感じている「何か」「…」を、すでに言葉にされている感情や経験とは区別して、「フェルトセンス」と名付けました。日本語では「からだの感じ」「気になる感じ」などにあたります。「違和感」や「痛み」として感じられることもあります。フォーカシングはフェルトセンスに触れていくプロセスです。——近田輝行「フォーカシングとは」、近田輝行・日笠摩子編著『フォーカシング・ワークブック』(2005, 日本・精神技術研究所)、p.9
また、ジェンドリンは著書『フォーカシング』の日本語版序文で、次のように書いています。
こうしたある特定の気がかりなことに関するからだの感じをひとつの「フェルトセンス」と呼びます。——ユージン・T・ジェンドリン著、村山正治ら訳『フォーカシング』(1982、福村出版)、p.6
これらでは、違和感や気がかりなど、どちらかというとネガティブな例が挙げられていますが、ニュートラルな、言いたいけれどまだ言葉になっていない感じや、たとえば大好きなことを思い浮かべた時のようなポジティブな感じも、フェルトセンスであり得ます。
より詳しくは、「フェルトセンスについて」を参考にされてください。
フォーカシングを創始したのはユージン・ジェンドリン(Eugene T. Gendlin)という人です。ロジャーズらとともに実践と研究をおこなう中で、ジェンドリンは体験過程(experiencing)、言葉になる以前の体験の流れについて思索を深め、心理療法において体験過程が非常に…
フォーカシングは心理療法(カウンセリング)の実証研究から生まれました。セラピスト(カウンセラー)が自らの実践を深める上でも、フォーカシングを学ぶことはおおいに役立ちます。セラピストがフォーカシングを学ぶことのメリットの一つは、…
最上の傾聴訓練法とも言われるインタラクティブ・フォーカシングについてのご紹介です。簡単に言うと、フォーカサーとリスナーが交替して話もしながら行う相互的なフォーカシング・セッションに、特徴的なやりとりを加えたもので…
まだ言葉にはなっていないけれど確かに分かっていること(身体知)を言葉にしていく、Thinking At the Edge(TAE)についてご紹介しています。日本語では「辺縁で考える」と訳されています。フェルトセンスにもとづく文章生成法で…
Focusing Initiatives Internationalウェブサイトに掲載された、Patricia Omidian博士による‘Coronavirus: Being with your Felt Sense of Fear’の日本語訳をコラムに掲載しました。博士はご経験を基に、戦時下と感染拡大状況の違い、感染症への恐怖が人々にもたらす影響についての述べ、恐怖に対処する具体的なやり方を4つの手順で紹介しています。(2020年4月23日)
パトリシア・オミディアン博士「コロナウィルス:恐怖のフェルトセンスと共にいること」日本語訳
関西大学大学院教授で臨床心理士の池見陽氏が、YouTubeに「新型コロナウイルス〜ストレスを緩和するコツ〜」をアップされました。詳しくは下記の「お知らせ」をご覧ください。(2020年5月8日更新)