ちょっと立ち止まって、今ここでの自分自身に注意を向けよう
私たちは普段の生活の中で、物事を先へ先へと効率的に進めようとして、結果的に自分自身を見失ってしまいがちです。少し立ち止まって、いま自分を取り囲んでいる状況のなかで自分がどんなふうにそこにいるのかを感じ取ってみること、自分が何を感じ、何を必要としているのかにしっかりと注意を向けることは、自分自身を取り戻し、地に足のついた形で状況に向きあう上で、とても大事なことです。しかし私たちの多くは、しっかりと自分自身を感じ取ること、自分自身に注意を向けることに、あまり慣れていません。
フォーカシングは、今ここで自分がどんなふうにいるか、何を感じ何を必要としているのかをしっかりと体験するための方法です。フォーカシングで自分自身に注意を向けることは、ただ今の自分のありようを確認するということではありません。フォーカシングのプロセスの中で、自分の中のなにかが緩み、新しい動きが創造的に生じるようなスペースが内側にうまれ、そして多くの場合、体験が次の一歩へと進んでいきます。立ち止まることで先に進む、というのは不思議な感じもしますが、自分自身のペースを取り戻し、自分自身をケアすることによってしか、自分の内側にある本来のプロセスがそれ自体として動いていくことはできないのです。
私たちはフォーカシングの研修ワークショップを提供していますが、フォーカシングはワークショップの中でしか体験できないものというわけではありません。フォーカシングは自分自身と関わるための方法です。ワークショップでは、フォーカシングという自分自身との関わり方を学び、普段の生活の中でも少し自分自身を取り戻せるようなスキルを習得していただくことを目指しています。
フォーカシングはセラピー研究からうまれた
フォーカシングはもともと、セラピー(心理カウンセリング)の研究から生まれました。フォーカシングの提唱者であるユージン・ジェンドリンは、セラピーの世界で有名なカール・ロジャーズと一緒に研究をしていた人です。ロジャーズやジェンドリンのグループはセラピーが効果的なものとなるための条件について研究し、セラピーにおいては、話された内容よりもそれを話す人がどのような体験の仕方をしているかということの方が大事だ、ということを明らかにしました。うまくいったセラピーでは、クライアント(セラピーを受けにきた人)は事柄についてただ話をするのではなく、まだ言葉にはなっていないけれど確かに感じているという気持ちや感覚に触れながら、それを新たに言葉にしようとしていたのです。
ジェンドリンは、うまくいったセラピーでクライアントがやっていることを、教えることができ、また学ぶことができる方法としてまとめ、これをフォーカシングと呼びました。まだ言葉になっていない気持ちや感覚に触れることは、普段それをやっていない人には難しく感じられるかもしれませんが、学ぶことで新しい世界がひらけると思います。また普段やっている人にとっては、そのプロセスを意識的にていねいにおこなって深めていくことで、自分自身に触れる能力をさらに自分の強みにすることができると思います。
フォーカシングを学ぶことはどんな役に立つか
(フォーカシングの効果)
- 自分自身が感じていることにしっかりと触れ、それを表現することができる。自分らしい次の一歩は、そこから生じてきます。
- 自分自身のペースを取り戻す。本来の柔らかい自分でいられる時間を日常の中につくる。
- 自分自身の創造性が動き出すスペースをつくる。フォーカシングを創作活動に役立てている人もいます。
- 自分の抱えている問題や課題に向きあう。問題を無理にでもなんとかするのではなく、自分がその問題のさなかにどのようにいるのかをしっかりと見つめ、自分自身に耳を傾けていくことで、ユニークな形で次の一歩が見えてきます。
参考: