✦シリーズ:フォーカシングが上手くなるために・・・???(1)
フォーカシングを教える場で、「フォーカシングが上手くなるためには、どうしたらいいでしょう?」と言うご質問を受けることがあります。
そのたびに、立ち止まって考えてしまうのです。
はて?「フォーカシングが上手くなる」とは、どういうことだろう。
ご自分のフォーカシングセッションにおいて、より丁寧にフェルトセンスに触れられるようになりたい、より精妙に身体の感覚を感じられるようになりたい、より深い気付きやプロセスを体験したい・・・といった、フォーカサーとしての望みが含まれているような気もします。
あるいは、もっとフォーカサーの役に立てるようなリスナーになりたい、ガイドのフレーズをもっと増やしたい フォーカサーとしっかりつながりたい・・・など、リスナーガイドとしての望みもまた、含まれているような感じもします。
「フォーカシングが上手くなる」とはどういうことか、どうしたら「上手くな」れるのか。シンプルだけれども、深い問いに対する私なりの考えや思いを、何回かにわたって、記していきたいと思います。
非常にシンプルで、深くなりそうな予感とともに。
【その1 余分な緊張を抜く】
フォーカシング・ネットワークの講座で使用しているテキスト『フォーカシング ワークブック』には、リスナーとしてフォーカサーに波長を合わせるやり方の一例が示されています。
目を閉じて深呼吸をし「このフォーカシング・セッションの私の目的は、心を開いて、その場に居て(be piesent)、見守っていることです」と自分自身に言うのです。
「心を開いて」と言いながら、両肩を後ろに引いて胸を開きます。
「その場に居て」と言いながら、自分が椅子に座っており、からだが大地とつながっているのを感じます。
「見守っている」と言いながら、目を開いてフォーカサーを柔らかい眼差しで見つめます。日笠摩子「リスナーの注意事項」近田輝行・日笠摩子編著『フォーカシング ワークブック—楽しく、やさしい、カウンセリングトレーニング』2005、日本・精神技術研究所、p.67
相互作用という視点でも、近年の神経生理学の見地からも、私たちの身体と心(神経系)は、 つながっているといえます。自分の、あるいは目の前にいる相手の、顔や身体(筋骨格)の緊張、表情、瞳孔、声のトーンやピッチ、速さ、呼吸など、私たちは、五感で、緊張の度合いを感じているのです。緊張した状態でフォーカサーとして自分自身と、あるいはリスナーとして目の前のフォーカサーと、優しく柔らかくつながるのは、難しいと言わざるを得ません。
では、落ち着いてセッションするためには、どうしたらいいのでしょう?
まずは、緊張に気づく。緊張を認める。それこそ、フォーカシング的な態度ともいえるし、プチフォーカシングとも言えますね。
緊張に気づく・・・って、どうやって?
いろんなやり方がありますが、ここで、フォーカサーもリスナーも、上記、フォーカサーに波長を合わせるやり方を使ってみましょう。
目を閉じて深呼吸をして、それぞれの内側を感じてみましょう。緊張しているでしょうか?どうでしょう?どの程度の緊張が感じられるでしょう?
そして、身体から余分な緊張をリリースされるよう、文言を口にしながら、1つ1つ丁寧に身体を感じてみましょう。
胸を開けば、呼吸が入りやすくなります。椅子に座った感じ、身体が大地とつながる感じは、重力に身体を預け、筋骨格が緊張をほどき、下がるのを感じられるかもしれません。身体が落ち着けば、おのずと表情筋、眼輪筋、瞳孔も変化して、「やわらかいまなざし」になるはずです。フォーカサーとリスナーがやわらかなまなざしを交わせば、よりおちついた安心感のある関係を感じられるでしょう。
ただし、文言の最後の「見守っていることです」は、リスナーのお仕事。フォーカサーは、「自分を感じることです」など、ご自分でぴったりくる文言にアレンジしてください。
余分な緊張は、「しっかりそこにいる」ことの足枷になります。このやり方は、一例にすぎません。それぞれのやり方で、緊張への気づきとリリースを、身体に落とし込んでいきましょう。
(文責:あべ)