フォーカシングは心理療法(カウンセリング)の実証研究から生まれました。セラピスト(カウンセラー)が自らの実践を深める上でも、フォーカシングを学ぶことはおおいに役立ちます。

セラピストがフォーカシングを学ぶことのメリットの一つは、セラピーのプロセスの中で起こっていること、クライアントがセラピストに投げかけてきていることに対して、より豊かな感受性を持てるということです。何かが引っかかるというようなセラピストの主観的な感覚、あるいは、クライアントとの関係の中でなぜか反応してしまう自分がいるという気づきは、セラピーにおいて重要な意味を持っています。フォーカシングは、この感覚が意味しているものに具体的に触れ、腑に落ちる理解へとつなげるための道筋を提供します。

セラピストにとってのフォーカシングのもう一つの利点は、クライアントの語りのプロセスをより深く理解することを可能にするということです。フォーカシングでは、自分自身の感じていることに具体的に触れ、その自分自身の気持ちや感覚に受容的な注意を向け耳を傾けることを大切にします。そしてこのことはまさに、セラピーでクライアントにしてもらいたいこと、クライアントの体験が進展していくために必要なことなのです。セラピストはフォーカシングを学ぶことで、セラピーでの語りの中で何が起こっているのか、クライアントが今どんなプロセスの中にいるのか、クライアントとセラピストが一緒に大事にしていくべきものは何なのかといったことについて、一つの視点を持つことができます。

もちろん、フォーカシングのガイディングを学ぶことで、セラピーで使えるテクニックを増やす、ということも可能です。しかしフォーカシングそのものは、クライアントを変化させるためにセラピストが使うテクニックのようなものではありません。フォーカシングは、人が体験を語ることで自ら変化していくというセラピーの根幹となるプロセスに関わるものであり、セラピストがフォーカシングを学ぶということは、そのプロセスに添うまなざしと姿勢を学ぶということなのです。

(久羽)

こちらも合わせてどうぞ。

フォーカシングから心理療法への示唆:論文2つのご紹介

ジェンドリンが日本の心理臨床家に向けフォーカシングについて語る動画

フォーカシング指向心理療法を知る本

参考